※過去妄想+ネタバレ注意
※時期的には9000HIT小説(生ぬるい温かみが手に浸透する)の数日後



「また会ったな」
「…あたしは会いたくなかったけどね」
目の前の彼女に微笑みかけると、少女は明らかに嫌悪の顔で此方を睨んで来た。
目の前で腰に手を当てながら頬を膨らます少女――リタ・モルディオに、シュヴァーン・オルトレインは営業スマイルとも言える上辺の笑顔を浮かべ
る。
ぎこちない関係だが、何故かお互いがお互いの事を信頼しきっていた。
愛する事を知らない少女と本当の笑顔を忘れた男は、自分達でも気付かぬ内に同じ道を歩き出す。


「書類は出したのか?」
「ええ」
「――もう帰るのか?」
「…そうよ」
躊躇いがちに肯定の返事を返す少女を、無理に引き寄せ抱き締める。
前程の大きなリアクションは見せなかったが、それでも彼女は呆然としながら口をぱくぱくと動かしている。相変わらず可愛らしいと思った。

「一晩くらい此処に居れば良いのに」
耳元で囁くと、
「嫌よ。此処は嫌い」
腕を振り解きながら彼女は此方を睨んで来る。

「あたし、貴族とか騎士とか大嫌いなの」
そう言って眉を潜める彼女に、どきりとなる。
騎士も嫌い。なら俺の事も嫌いなのだろうか。

「じゃあ俺の事も嫌いか?」

問い掛けると、
彼女はそっぽを向いて俯いてしまう。顔を覗き込むと彼女の顔は真っ赤に染まっていた。
 

「あんたは…特別」


小さくだが確かにそう呟き、彼女は黙り込んでしまう。
急に愛しさが込み上げてきて、一度拒絶された手でもう一度彼女を抱き締めた。




「じゃあ、俺の部屋に泊まってって」
そう伝えると彼女は顔を真っ赤にしたまま、はぁ?と盛大に嫌そうな声を上げた。

「今日はもう日が落ちてる。アスピオまで1人で帰るなんて危ない。
…だから、な?」


そう言うと彼女は窓から外を見て――それから盛大に溜め息を吐く。





「今日だけ、何だから」

そう言ってむくれる彼女に微笑んで、そのまま自室に向かい歩き出した――。






*永久凍結の心を、君なら溶かせるのかもしれない


9000HIT世界観は、あたしもよくやるなぁってくらい行き過ぎた妄想だと思う。
まさかその病気設定のその後SSを希望してくれる強者が居るとは思わなかった。



08-10,16


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