※[虚偽の世界]の続きっつーかパスカル目線。先に虚偽の世界の方を見た方が良いかも。



教官の馬鹿。頭バナナパイ。
涙を拭いながらロベリアが死んだという場所でうずくまっていた。何時か教官が迎えに来る事を夢見て。

だけど何時間経っても教官は現れない。

(あたしのこと嫌いになっちゃったのかな)
そうだよねと自嘲する。教官に酷いこと言っちゃったもん。
せめて謝ろうと立ち上がると、急に立ち上がった所為か前から歩いて来た兵士とぶつかり、反動で尻餅を付いた。
「何しやがる!」
「ちょ、ちょっとぶつかっただけじゃん!悪かったよー」
謝りつつ、慌てて走り出そうとすれば腕を捕まれ壁にたたき付けられた。

あ、ヤバいかも。
そう思った時には遅く、兵士が銃を発砲していた。

世界が赤に染まる。
寒さでかじかんだ指が、じわじわと痛みを訴える。
ニ発、三発と弾丸は撃たれ、雪の中にあたしの体は倒れ混んだ。
銃を下ろした男が、右手からデリスリングを奪って行く。
返して――そう言おうとしたら、言葉の変わりに赤い吐瀉物が出て来た。
「早く行こうぜ」
指輪を奪った男達が遠ざかる。
――手を伸ばす気力さえ無かった。
痛みと薄れる意識の中で、思う。全部自業自得だなぁと。
あの時教官と喧嘩しなければあたしはこうして外に出て来る事も無かった。あの時あたしがあんな事言わなければ、喧嘩に何てならなかった。全
部あたしが勝手にやった結果だ。因果応報、って奴かな。
苦笑いした唇から、赤い液体が零れる。
薄れる意識。
せめて最期に教官に逢いたかった…。

「パスカル」
そうして瞬きをすれば、教官が目の前に居た。
此処はもう天国なのかと思って手を伸ばせば、その手を教官は掴み返してくれた。
「…ご、めん…ね……きょ、かん……」
上手く笑えない。それでも震える唇で呟いた。
教官は時が止まったかの様に呆然とあたしを見ている。
――教官がこれから此処を通った時、ロベリアさんじゃなくてあたしを思い出してくれたらなぁ、なんて考えるあたしは唯の馬鹿かな。
「パスカル!!」
遠くでシェリアの声が聞こえた。
シェリアはあたしの体を持ち上げ、広かった血の雪に座り回復術を使いはじめる。
「…あた、しね……」
「パスカル、喋っちゃ駄目」
良いよ、シェリア。あたしはもう駄目だから。心の中で呟いた。
「…無駄だ、シェリア」
そして、それを教官が一番分かってるみたいだ。それも又良かった。

意識が徐々に、深遠に堕ちていく。死ぬってこういうことなんだろうな。
何でか分からないけど、恐怖は無かった。

「……ほん…と……は……」

教官に、あたしだけを見て欲しかったの。
ごめんね教官。ワガママでごめんね。
最期のワガママ言うとね。

「……リ……ク…」

一度だけでも、名前で呼びたかったな。







「――ロベリア…」


最期に聞こえた教官の声は、やっぱりあたしを求める声じゃなかった。



*虚偽の世界-終焉-




10-04,13


教官目線(虚偽の世界)と矛盾してるところがある理由は、タイトルで推測してください←ちょ

といいつつ個人的な答えを出すと
教官の記憶はロベリアさんが死んだ時とごっちゃになってる所為でこの終焉の方と矛盾してるところがあるんです。つまり真実はこっちです。




Back