不意に後ろから肩を叩かれ、パスカルは振り返った。
「パスカルって、ああいうモノを作ったりするのも得意なのか?」
目の前にはやや照れた顔のアスベルが立っている。彼女は首をかしげた。
「ああいうモノって?」
「指輪…とか」
フォドラでデリスリングを作った時の事を言われているらしい。
理解したパスカルは思い出したと言わんばかりに相槌を打ち、首を縦に振った。

「材料さえ有れば作れるけど…どして?」
「…シェリアの誕生日が近いんだ」
そっぽを向いたままアスベルは答えた。
又もや相槌を打った彼女は首に巻いたマフラーをひらひらさせながら嬉しそうに飛び回る。
「シェリアに指輪作るんだねっ!」
「ま、まあ…そういう事かな…」
「いーよ!教えてあげるっ!」
彼女は次の街に着いたら宿で作り方を説明すると、確かに約束をした。
アスベルはそれに肯定し、少し先を歩く仲間達の方に向かって歩き出す。パスカルもまたそれを追い掛けた。









次の街に着くと、アスベルとパスカルは買い出しという名の指輪作りの材料を買いに街中へ出掛けて行った。
アスベルがシェリアに指輪を作りたがっているという事をパスカルから唯一聞いたマリクは、出掛けて行った2人の意図をシェリアにだけは悟られて
はいけないと彼女を出来るだけ気にかける。

「教官」
彼女の横顔を盗み見ていると、シェリアの方から話し掛けて来た。
「どうした?」
平然と答えればシェリアは小首を傾げ、言葉を投げてくる。
「アスベルとパスカルを知りませんか?」
「2人なら買い出しに行ったぞ」
「えっ!…今週は買うものが多いから教官とヒューバートに行って貰おうと思ってたのに」
「残念だったな」
シェリアを盗み見ていたことはバレていないらしい。
ほっとしたのも束の間。やや俯いたシェリアがぼそりと呟いた。


「…なんだか最近。アスベルとパスカルって仲良く有りません?」

「そ…そんなこと無いだろう」

そう来たか、と教官は苦笑した。
アスベルとパスカルはシェリアに隠れて指輪製作を計画し、実行しようとしている。
だから必然的に2人きりになる事が多くなるのだが、シェリアは事情を知らない為パスカルにアスベルを取られるんじゃないかと気が気で無いみた
いだ。

「この前だって2人で何か話してたし…」
「パスカルがアスベルからバナナでも貰ったんじゃないのか」
「もう、餌付けじゃないんだから」
シェリアは膨れ面だったが、納得したのか傍を離れて行った。

彼女はヒューバートとソフィの元へ走り、3人で楽しそうに話し出す。
マリクもソフィに手招きされ、傍に向かって歩きだした。



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