買い出しを終え、宿屋に帰ってきたアスベルとパスカルはシェリアの気も知らずに2人で1つの部屋に閉じこもった。
勿論2人が部屋に閉じこもったのはシェリアに送る指輪を作る為で、2人には何の疚しい気持ちも無いのだがシェリアの不安は募るばかりだった。


(アスベルはパスカルみたいな子が好きなのかしら……)

パスカルとシェリアは本人達が分かる程ほぼ真逆の性格だ。
そんな2人の内、もしアスベルがパスカルを好きだったのなら…最早シェリアに勝ち目は無い。
アスベルとパスカルが何をしているのかさっぱり検討のつかないシェリアは、何度も何度も重い溜息を吐いた。

そんなシェリアの気持ちの表れに、唯一アスベル達とシェリアの2組の心情を知るマリクは苦笑と重い気を隠せない。
出来ればシェリアにアスベル達が何をしているのか教えてやりたいが、そうすればアスベルが隠れて指輪を作っている意味が無くなってしまう。
可哀相だがもう暫くほおっておくしかない。


「シェリア、悲しい時の顔してる」
頬杖を付く彼女にソフィが話を持ち掛けた。

「…ちょっと、ね。色々合って……」
「アスベル達の事?」
「……うん、まぁ…」
意外にもソフィは鋭いみたいだ。それともヒューバートに教えて貰ったのだろうか。
何度目か分からない溜息を吐いたシェリアに、ヒューバートが近付いた。

「鈍感な兄さんとバナナと研究しか興味が無いパスカルさんに間違いが起きる訳無いでしょう。
何か事情が有るんだと思いますよ」
核心を付いたヒューバートのフォローに、思わずマリクは笑ってしまった。
その通りだ。
シェリアの気持ちに全く気付かないアスベルと、バナナと研究の事で頭がいっぱいのパスカルに疚しいことなど有る筈が無い。
シェリアもヒューバートの言葉に「そうね」と微笑みながら頷いた(否定はしないらしい)。
唯、それでもやっぱり不安は拭えない様だった。


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10-04,05




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