※微裏←と裏の境界線が分からない人が書いた微裏

※エクサ視点






ラクシュリが熱を出した。

――理由は色々考えられるのだが、俺は普段からラクシュリに無理をさせ過ぎたのかもしれない。‘勇者の右腕’と言われ、どんなことにも弱音を
吐かずに俺に従ってきたラクシュリには、どれだけのプレッシャーと疲労に堪えているのか。…俺には想像もつかない。
アンジェリカとシーラは隣の部屋に居る。夜も遅いし、恐らくもう眠っただろう。
俺はラクシュリの看病の為にもう少し起きて居ようと、ベッドの隣に有る椅子に腰掛けた。

横で吐息を漏らすラクシュリは随分苦しそうだ。熱が上がって来ているのだろうか。額に手を当てれば、わざわざ俺と温度を比較せずとも体が熱い
ことがわかった。
「…ラクシュリ」
「…っ…はぁっ…」
薄目を開けては居るが、随分苦しいのだろう。
水を飲めば少しは楽になるかもしれないと思い、彼の上半身をゆっくり起こしてコップを手に取る。中の水を飲ませようとコップを口元で傾けるが、
唇から水が零れていくだけだった。

このままでは水を零すだけだ。意味はない。
コップを一度机に戻し、ラクシュリをベッドに静かに寝かせる。
そうしてコップの残り水を口に含み、ラクシュリの上に馬乗りになって口移しをした。
少しずつ水を流して、ラクシュリが飲めるようにしてやれば、彼は息を荒くさせながらも少量の水を飲み込んだ。
唇を引き離すと、薄目を開けたラクシュリが何か喋りたそうにこちらを見ている。
「…タオル、冷やしてくるな」
逃げるように彼の前から踵を返す。
一枚扉の向こうに広がる洗面台の前で、何やってんだかと自身を自嘲した。
ラクシュリが言いたかったことは何となく分かる。だが俺は…。


…絞ったタオルを持ち、ラクシュリの居る部屋に戻る。
冷やしたタオルを額に乗せてやれば、小さく喘いだラクシュリが少し優しい顔をした。
「つめて…」
囁く言葉に力は無いが、喜んでいるのならよかった。
「…具合は?」
問い掛けるとラクシュリは衰弱した声で呟く。
「…あたま、いてえ……」
…やはり熱が上がって来ているのだろうか。頬に手を当てると、矢庭に彼が俺の手を掴んだ。

「…ラクシュリ?」

「……つめたい…」

タオルを冷やしに水に触れたからだろうか。冷たくて気持ちいい様だ。
薄目を開けて俺を見るラクシュリが、婀娜の様な顔を見せる。
それが俺の押さえ付けた理性をどうにも爆発させた。
ラクシュリの上に跨がり、両手を俺の片手で押さえ付け、濡れた唇に唇を押し当てる。突然のことだからだろう、ラクシュリは驚いて硬直していた。
重ねた唇の中で、彼の咥内に舌で侵入し、絡める様に彼の舌を舐める。
「…!」
ラクシュリが微弱に痙攣したが、押さえ付けた両腕の抵抗は希薄なものだった。恐らく熱と頭痛の所為で頭がぼんやりしているのだろう。

「ん……ふ…っ…」
涙目に喘ぐ彼が余りにも婀娜婀娜しく、舌を絡める力が強くなる。
十二分程この淫靡な行為を楽しみ、唇を引き離してやるが、絡めた舌から唾液が糸を引いた。
「は…ぁ……はぁ…っ…」
俺から目を逸らしたラクシュリの唇に、自由な方の手の親指を突っ込む。
「…ふ…ぅっ……」
言わずとも舌を絡めるラクシュリがとても愛おしくなった。
もう一本指を入れてやろうかと思ったが、それより良い事を考え、親指を引き抜く。

指に付いたラクシュリの唾液を舐め、彼に向かって鮮やかに微笑んだ後、艶やかな首筋に唇を押し当てる。
なぞる様に上から下へ舌を這わせれば、先程より強い痙攣をしたラクシュリが腕をばたつかせた。

ああ、やっと抵抗した。
唇を吊り上げたが、離しはしない。腕を強く押さえ付け首筋から舌に下がり鎖骨の傍まで舌を這わせる。
「ひっ……ん…っ…!!」
涙声と喘ぎの混ざった声。
体の芯まで溶かすような声色に、俺は満足感に満たされ首筋から舌を離した。

解放すれば、ラクシュリは顔を真っ赤にして一滴の落涙を零す。
虐め過ぎたか。
指で涙を掬い上げ、頬に触れるだけのキスをした。
「…病人に…なに、しやがる…」
息を荒くしたラクシュリが涙で目を霞ませながら俺を睨む。
「すまない」
だが全ては無防備なラクシュリが悪いのだ。あんな婀娜婀娜しい顔を見せられたら、押さえ付けていたモノも爆発する。


何処かで気付いていたお前への‘甘さ’の正体。

俺はラクシュリが、好きだ。






「ラクシュリ」

「…」

拗ねてしまったのか、ラクシュリは横を向いてしまった。
拗ねたらシーラより厄介な奴だからな。
とりあえずもう一度ごめんと謝ろうとして、異変に気付く。
「…ラクシュリ…?」
「……さむい…」
熱がまた上がって来たのか、見れば、顔色が悪そうだった。
「大丈夫か…?!」
やり過ぎたらしい。息を荒くして咳込むラクシュリは俺の問いにも答えない。


ベッドを一度下り、部屋の消灯を暗くする。
再びベッドに近付き、震えるラクシュリのベッドに潜ると、細い体を後ろから抱きしめた。
「…ん」
寝返りを打つ様に振り返ったラクシュリが、胸板の中で目を閉じる。
よかった、暖かいみたいだ。
暖める方法などこれしか見当たらないから、安心してくれて良かった。


(…体は随分熱いのに寒いのか)
抱き寄せた体を更にきつく抱きしめる。
…ラクシュリは何時の間にかすやすやと寝息を立て眠っていた。



*コケティッシュ*ワルツ
のコントラスト)



10-08,18


コケティッシュ=艶かしい。
すいませんでした。首吊って自重してきます。


続きが有る…だと?⇒Re:コケティッシュ*ワルツ




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