※ラクシュリ視点




気付けば空には焼け付く様な太陽が昇っている。
またか、と。
僕は自身に向け深い溜め息を吐いた。





最近、いつもこうだ。
眠れぬ夜をぼんやりと過ごし、眠りが訪れてもほんの数時間で目が覚めてしまう。
寝ても覚めても見えるのは悪夢。
こんな状態が既に一週間は続いている。
…正直、限界だった。
限界だけど、エクサ達には悟られたくない。
適当に着替えを済ませ、僕はエクサ達が待っているであろう宿屋の入口へ向かう。


入口には既にエクサが居た。シーラとアンジェリカはまだらしい。
「おはよ、エクサ」
「おはよう、ラクシュリ」
後ろ姿に挨拶を交わせば、エクサがこちらを振り返る。
「…ラクシュリ?」
「ん?」
小首を傾げるエクサに、思わず僕も首を傾げた。
どうしたと言うのだろう。問い掛ければ、エクサは憂色を浮かべた。

「…眠れてないのか?」

――どきり、心音が一瞬跳び跳ねる。

「…どうして?」

生唾を飲み込んだ。
それでも動揺を隠し、問い掛けた瞬間。


「おっはよー勇者!」
「おはようございます、エクサ様。あとラクシュリも」
現れたのはアンジェリカとシーラの2人だった。
エクサの歯切れの悪い言葉は気になるが、2人の前で暗い顔はしたくない。
冗談混じりの適当な挨拶を返せば、アンジェリカもあれ?と小首を傾げた。
「ラクシュリ、目に隈が出来てるわよ。大丈夫?」
「へ?」
…そういえば今日は鏡を見なかった気がする。成る程。エクサの先程の問いもこれを見たからか。

「熊…?ラクシュリの目から熊が出来るのかっ?!」
シーラちゃんはモンスターだ。人間の知識など浅はかなのだろう。
だからこそ、そんな天然発言に3人で思わず笑ってしまった。

エクサが隈についてを説明しながら、朝早い森を歩き初める。僕とアンジェリカもそれを追い掛け森の中へ足を踏み入れた。



01*メランコリー色の心



10-08,19


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