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モンスター自体は大した敵ではなかったのだが…ヒスイの傷が酷い。
―エアスラスト。相手を引き裂く風の刃を無数に食らったのだからある意味当たり前だが、このままではヒスイが危ない。
イネスとクンツァイトが先頭に立ち、俺はヒスイの体を抱えて近くの街まで走った。

…今日のヒスイは何処か様子が可笑しいと思ってたけど、まさかこんなことになるなんて…。
コハクが応急処置をしたけど、ヒスイの回復系思念術には劣る。
とにかくまずはヒスイを安静に寝かせる為に宿に着かないと。

出遭うモンスターをイネスとクンツァイト、ベリルがなぎ倒し、コハクに支えられながら街道を走る。
そうしてやっとの思いで着いた街の宿屋は、街の入り口付近に有ったのが幸いだった。
直ぐに部屋を借り、背中からヒスイを下ろして寝かせた。
彼が普段身につけているソーマやゴーグル等は眠るのに邪魔そうだからそっと外して枕元に置いてやる。
それから、コハクの横に腰を下ろした。彼女は兄を心配そうに見つめている。…当然、か。
ヒスイが怪我したのは周りを確認しなかった俺の所為だ。もっと周りをよく見ていればよかったと、今更ながら後悔した。

「今日の彼、ちょっと可笑しかったわよね?」
不意にイネスが此方に問い掛けてくる。
――それは俺も感じていた。どうやらイネスも同じ事を感じていたみたいだ。
「何処か遠くを見てる感じだった。…何か有ったのかな…」
兄を気遣い再び思念術を掛けるコハクが、イネスの言葉に呟く。
「肯定。今日のヒスイは8回溜息を吐き、15回俯いた」
「うわ、まじ?全然気付かなかった…」
…ベリルは気付かなかったみたいだが、彼女以外はやっぱりそう感じていたみたいだ。


「…スピルリンクしてみたらどう?何か分かるかも」
やがてイネスが1つの提案を出した。
スピルリンク。――相手のスピリアに自分の意識を飛ばすモノ。
確かにそれならヒスイに何があったのか分かるかもしれない。
「そうだね。やってみよう」
席を立つと、全員も同じ様にその場所を立ち上がった。役一人、ベリルの反応が遅れたものの彼女も慌ててその場を立ち上がる。

――ヒスイ。悪いけどちょっと君のスピリアを見せてもらうよ。
ソーマに強い願いを込めたと同時、俺達5人の体はヒスイの中へスピルリンクをはじめた。



*迷宮-02/Singu Side-
(俺達は、ヒスイが心配なんだ)






10-01,13


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