――ああ、シング。お前等。さては俺にスピルリンクしやがったな。

「ヒスイ。君は何に悩んでいるの?」
――俺?別に悩んでなんかいねえ。

「じゃあ元気が無かったのは…?」

――唯、怖いだけだ。

「‘怖い’?貴方が?」

――そうだ。俺はこのスピルリンクっつー機能に激しい怒りと…恐怖を感じる。
相手の心を読み取る力…。…お前等は怖くねえのかよ?

「どうして?」

――相手の思ってることが全部分かるって事は、自分が隠してる事も心の中で静かに思ってる事も簡単に読みとられちまう。
…だったら、知らない方が楽じゃねえか。
知らない方がいい事何て、この世には死ぬほど詰まってやがる。


「そんな事ないよ。スピルリンクは――…」

――俺には重過ぎるんだよ!!


眩い光と共に5人の姿は消え、世界には‘俺’だけが残された。
深い闇世界の中、ひとり。頭を抱えて蹲る。
…そうだ。俺にはこの力が重過ぎる。
人の秘密を暴いて、そんな事本当にしていいのだろうか。心は、スピリアはその人間のものだろう…?
だから俺のスピリアも俺のモノ。誰も知らなくていい。誰も、この胸に抱く恐怖と不安と、一握りの孤独を、知らなくていい。…コハクでさえも。


(頼むから、もうこれ以上関わらないでくれ)

深く関われば、それだけ裏切られた時に傷つく事になる。
俺は臆病者だ。だから俺は俺自身が傷つく事が怖い。
お前等に。…シングに、裏切られるのが、捨てられることが怖いんだ。


何時かお前達は俺を置いて何処かに行くんじゃないか。
頭には、不安だけが。積もっていく。



*迷宮-03/Hisui Side-
(そんな事有る筈無いって分かっているのに。ああ、何て弱い俺のスピリア)






10-01,13


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