「‘強制リンクアウト’…。やられたわね」
最初に起き上がったイネスが静かにヒスイを見た。――彼に目覚める気配は無い。
…強制リンクアウトなんて、そう簡単に出来る事じゃない。
そう。アレがヒスイの本心。俺達が知らない彼の闇の部分。
そしてヒスイの中であの思い―恐怖や怒り―が暴発している。だからリンクアウトさせれるだけの力になった。…なって、しまった。
「もう一度スピルリンクして…!!」
今度こそ救いたいんだ。言いたい事も、半端なままで終わってしまった。
ソーマを使おうと立ち上がったところで、横に居たイネスに抑制される。
「止めなさい。そんな事したらヒスイが余計に傷つくわ。
彼の言葉を聞いていなかったの?――‘スピルリンクが怖い’…。ヒスイはこの力が嫌いなのよ」
…確かに、イネスの言葉は最もだ。スピルリンクして彼に語りかけるのは逆効果なのだろう。
彼はスピルリンクというものが嫌いなのだから、その力で語りかけたらますます嫌われてしまうかもしれない。
となれば、回復を待って面と向かって話すしかない。
「お兄ちゃん…」
コハクの寂しそうな声が耳に残る。
俺もヒスイが心配だ。スピルリンクをそんな風に思っていたなんて、気付くことも出来なかった。
俺とヒスイ、そしてコハクはかなり前から一緒に旅をしていたのに。

――確かにスピルリンクは相手の心の裏を見る事が出来る。
知りたくないことまで、時には知ってしまう。
でも。だからこそこの力は‘大切’なモノなんだ。

嘘を並べて付き合っていくより、本音をぶつけれる仲になれたなら、その方が良いに決まっている。
…俺はヒスイに、スピルリンクは怖くなんてないんだと、ちゃんと伝えてあげたい。



それから、こう言って笑おう。

‘本音をぶつけてくれてありがとう’って――。



*迷宮-04/Singu Side-
(ヒスイ。君を、この迷宮から助け出すよ)






10-01,13


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