※エクサ視点




ラクシュリの様子がおかしいのは、俺もアンジェリカも薄々気付いていた。
だから四方向に別れたあの時――事前にアンジェリカにシーラを任せておいたのだ。
今頃シーラもアンジェリカと合流し街を目指しているに違いない。
そして俺はラクシュリを追い掛け、危機一髪に彼を助けることが出来た。

安堵したのか、立っているのも限度なのか、ラクシュリは木に凭れかかったまま地面に座ってしまう。
「ここで休んでろ」
声を掛け、残りのモンスターと向き合った。
先程より数は減っている。この程度なら俺一人でも倒せそうだ。
ミラージュの柄を握り締め、モンスターに向け剣を振るった。

1匹、2匹とモンスターは退散して行き、数も随分減ってきた。
ラクシュリが多少蹴散らしてくれていたのが幸いだ。少しだけ彼の方を見れば、ラクシュリは頭を抱えて悶々とした顔をしていた。具合が悪いのだ
ろう。早く街へ連れていかなければ。
再びモンスターと向き合い、剣を動かしモンスターを薙ぎ払う。無論、刃の無い剣だから相手は気絶しているだけだ。
残り数匹――。漸く指で数えれる程度までモンスターの数が減ったと思えば、背後から襲い掛かる黒い影が合った。
しまった。
油断の所為か反応に遅れ、剣で身構える暇も無い。
せめて軽傷で済ませようと受け身になった刹那。


モンスターと俺の間に、飛び込んで来る影が合った。


「――ラクシュリ!!」

此方に倒れてきたラクシュリの体を慌てて支えた。
背中に負った傷からは、赤黒い液体が零れ落ちて行く。
使うつもりは無かったが、咄嗟に術を放ち残りのモンスターを追い払った。
傷を負い、苦痛に顔を歪めるラクシュリを、俺は傷に触れない様慎重に支えた。

「どうしてこんな無茶を……」
問い掛ければ、ラクシュリの細い瞳が俺を見る。
彼は唇に微笑を浮かべると、小さく呟いた。

「…‘右腕’は…キミを守る為に、居る者だろう……?」
呟いたラクシュリから力が抜ける。

「ラクシュリ…!!」

呼んでも揺すっても、彼はもう反応しなかった。



03*折れた翼



10-08,19


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