※シーラ視点




宿を飛び出し、逃げる様に街を走るシーラには1つの確信が合った。

コピーだ。

ラクシュリが退治したと言うモンスターは、コピーが送り込んだに違いない。
…余計なことをしやがって!!
街の入口から少し飛び出した場所で足を止め、木を殴り、叩いた。
偶々退治したのはラクシュリだったが、コピーは元々そのモンスターを勇者を殺す為に仕向けたのだろう。

つまり、一歩間違えれば。
あの傷を負っていたのはエクサだったのだ。


それが堪らなく苛立つ。
勿論、ラクシュリを傷付けた事も許せない。だが勇者を本気で殺そうとした事が何より許せない。
殺してやる。あんな小賢しいコピーなど、今からでも殺しに行ってやる――!!!


「シーラ!!」

どす黒い感情が袋小路に埋まる中、傍にやって来たのはエクサだった。
彼は木の幹に手を置くシーラを呼び、近くに駆け寄る。

「どうした?気分が悪くなったのか??」
「……」
…本当の事など言える筈もない。
私が魔王だと言う事も。あのモンスターが私のコピーの差し金だと言う事も。
ずっと騙す事など不可能に決まっているが、それでも今は話すタイミングでは無いのだ。
だからエクサの体にしがみつき、静かに涙を零した。


ごめんね勇者。
ラクシュリが傷付いたのは、元々私が悪いんだ―――…。

あんなコピー作らなければよかった。
いや…。
魔王なんて、ならなければよかった。

後悔の渦に飲み込まれ、唯、静かに勇者の胸の内でうずくまった。








「…お帰りなさい」
エクサに支えられて宿に戻れば、ラクシュリの腕には先程までには無かった点滴が刺されていた。
「さっきお医者さんが来たの。ラクシュリも今は眠っているわ」
「…そうか」
アンジェリカの言葉にエクサは安堵し、未だにしがみついたままの私の頭を撫でる。
…ああ。
失いたくない。勇者を。
こんなにも暖かい日だまりの場合を。
思わず強くしがみつくと、勇者が少しだけ笑った気がした。

微笑んだエクサは上からラクシュリの顔を覗き込む。
ラクシュリはすやすやと寝息を立てて眠っていた。



02*リグレット∞ガール




10-08,20


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